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Produce Next Report

~電力ビジネスについて~

シニアマネージャー 丹治 三則

第 37 回目は、リソースアグリゲーターの可能性についてご紹介いたします。

電力インフラのデジタル化による、需要家に対する2つのサービス形態の登場



電力インフラのデジタル化によって、需要家に対する2つのサービス形態が登場した。一つ目、需要家の消費パターンに即した電気料金契約であり、様々なタイプの電力契約が登場している。二つ目は、電力消費量から需要家の行動ログとニーズと読み取り、他のサービスをカップリングして提供してするサービス(宅内IoT)である。

電気料金の低減による過当競争の恐れ


電気料金について、電力自由化後、多くの電力小売り事業者が競争することで、様々な料金サービスが登場している。経済産業省によると結果として、低圧向けのスイッチング(新電力への切り替え)の比率は、平成29年5月の時点で10%を超えたとされている。
主な料金メニューとして、他のインフラ(通信、ガス、水道等)のセット割引、長期契約による割引、従量課金制度等、やや高額な再エネ100%の電力等、差別化された商品開発がなされている。このような競争環境下で、需要家の利便性は高まりスイッチング比率はより高まると想像する。しかし、小売事業者にとって需要家獲得と原価低減を同時に求められ、調達では市場価格に依存しない自主電源を開発、あるいは顧客開拓能力を強化等、過当競争に巻き込まれないための手段が必要となる。

付加価値を高めるにはUXを通じたサービス開発が有効



そこで登場するのが、電力サービスの付加価値を高める宅内IoT事業である。電力を中心とした各種センターを宅内に設置して、データ収集・加工・分析を行い、データを収集してプラットフォームを構築、電力小売を含むサービス事業者にプラットフォームを提供することで、需要家の利便性向上に寄与する。
既に以下のような様々なサービスが提案されており、その多くが実証実験段階にある。

1. 省エネ:電力消費量から家電製品の省エネ診断により買換えを促進するサービス
2. 保安:電力消費量の情報を元に家庭内の電力機器の保守点検
3. ホームセキュリティ:みまもり、防犯の情報の提供
4. 小売・EC:電力消費に合わせて地域の小売店の販売促進情報を提供
5. ヘルスケア:家庭内の健康状態に合わせた室温管理と省エネの同時達成
6. 自治体:電力契約の網羅性に着目し自治体の広報チャネルを構築 etc

何れも市場規模の上では有望とされるが、需要家がこぞって購入する「キーコンテンツ」になるには至っていない。その理由は、既に代替サービスが存在し購入の必然性がない点につきる。本来電力はサービスを獲得する手段であり、需要家はサービス獲得の対価として電力消費量に対価を支払う。よって、需要家のUX/UIをもとにして、需要家が求めるサービスを基軸に考え、電力を付随させるものとして設計する必要があるのではなないだろうか。現在は電力契約単位や計測機器が制約となっているが、電力はいち早く顧客のフロントに立ってサービス開発を進めた企業にバンドルされるかもしれない。