第 39 回目は、RPA ”Robotic Process Automation” についてご紹介いたします。
最近、職場やニュース等で「RPA」という⾔葉を聞く機会が増えていないだろうか︖
RPA とは、”Robotic Process Automation”の略で、従来は人手で実施するしかなかったような作業を人間に変わってロボットに実⾏してもらう技術であり、今、⽇本中の企業に注目されている。RPA を用いた業務改革サービスが日本経済新聞社主催の「日経優秀製品・サービス賞 2017」に選ばれたことからもその注目度の⾼さが分かる。
この今話題の RPA に関し、その概要から具体的事例、今後のトレンドなどについて、今後数回に分けて幅広く紹介していきたい。
まず、RPA は、人の PC 操作を記録し、それらを記録したとおりに再現することができる。
その正体は何か︖実体はソフトウェアである。ソフトウェアによって動くため、これらの作業を実施するロボットを「デジタルレイバー(仮想知的労働者)」と呼んだりしている。
では、RPA はどのような業務で活⽤されているのか︖
RPA が得意とする作業は「ルールと⼿順がしっかりと決められた繰り返し⾏われる作業」である。例えば、複数の Web サイトから⼤量のデータを収集し、⼊⼒するといったルーチン作業があった場合、⼈の⼿で実施すると非常に時間がかかるのに対し、RPA を利⽤すると⾃動で情報を収集するだけでなく、ソフトウェアによる作業のためミスなく正確な⼊⼒作業をすることができる。
他の事例としては、システム監視作業における RPA 導入も普及している。システム監視における RPA 活用は、定期的なメンテナンスや、特定のアラートに対し、決められたオペレーションを実施することが可能である。RPA いう名のデジタルレイバーには体⼒という概念がないため、夜間含む 24 時間 365 日の監視オペレーションが実現可能となる。
さらに、近年では、RPA の適用範囲が拡大してきており、人工知能(AI)や⾳声認識と組み合わせた利⽤シーンも増えてきた。例えば、電話問い合わせといったコールセンター業務においては、電話音声をリアルタイムにデジタル化し、AI とRPA により情報を分類し、⼤量の機械学習により⽣成された FAQ 情報から、オペレーターに瞬時に回答案内を提供するといった活⽤事例も存在する。
RPA 業界では、先の 2 つの事例のような定型業務を実施する RPA を Class 1、その次の例としてあげた AI 等を活用し、判断が必要な業務を実施する RPA を Class 2 と定義している。さらに、数年後の実現が予想されている Class 3では、⼤量データからより複雑で⼈間では不可能な判断をロボット⾃ら⾏い、業務プロセス全体の改善まで実施するRPA が登場すると言われている。
このようにメリットしかないように⾒える RPA だが、実際は、初めから簡単に利⽤できるわけではない。どんな作業をどこまでどのように RPA に任せるか、複数のロボットをどう管理していくか、導⼊効果を⼗分に引き出すためには、それなりのノウハウと適切なアプローチが必要となってくる。
現在、RPA は、期待が先⾏する「過度な期待」のピーク期にあり、導⼊し始めた企業の中には、導⼊時に費やしたコストやロボット運用に伴う業務負担と比較し、導入効果を感じていない企業が一定数存在している。ロボット作成やガバナンスなど内製化にうまく移⾏できなかった企業や導⼊製品⾃体を⾒直そうとする企業も出てきており、こういった課題解決は避けられない状況である。
RPA ベンダーにとっても、Biz Robo や Win Actor といった純国産の RPA 製品だけでなく、海外製品ベンダーの日本進出も浸透してきたため、現在市場は飽和状態にあり、今後さらなる価格競争が予想される。次回は、こうした RPA の裏の顔を深堀りすることで、今後、各プレイヤーがどのような⽅向性を目指していくべきかを論じていきたい。