第1回では「AI-OCR」、第2回では「RPA前の業務診断」について紹介してきた。第3回は、RPAと組み合わせることで効率化の実現が期待される関連ツールとして、「プロセスマイニングツール」「BPMS」「RPAI」について紹介する。
プロセスマイニングとは、業務で利用するソフトウェアシステム(CRM,ERP,SFA等)に記録されている「イベントログ」から業務を理解し、プロセスを可視化・改善する取り組み。プロセスマイニングツールはこれらの取り組みを容易にするツールである。
従来、RPAを導入する際には、コンサルタントなどによる各部門へのヒアリングなど、担当者の経験、ノウハウなどから業務を評価し、ソフトウェアロボの導入先を決めてきた。プロセスマイニングツールによって、各種のイベントログを収集し分析、RPAをどの業務に導入すると高い効果が得られるかを容易に発見することができる。
プロセスマイニングツールは一般的な機能、として以下の、「プロセス発見」「適合性評価」「プロセス強化」を備えている。
◆プロセス発見
事前に業務知識をインプットすることなく、プロセスフロー図(As-Is)を正確かつタイムリーに作成。これまで、ヒアリングやマニュアルを紐解くことによって作成していた、プロセスフロー図作成の手間と時間を大幅に短縮することができる。
◆適合性評価
マニュアル等の標準的な業務プロセスモデル(To-Be)を取り込み、「プロセス発見」で作成したAs-isモデルとの差分の洗い出しやコンプライアンス違反の可能性のあるプロセスを特定することができる。
◆プロセス強化
プロセス改善施策を策定する際のサポート機能。RPAを導入等によりプロセスを変更した場合の、サービスレベルの測定、スループット時間・頻度のシミュレーションが可能。
プロセスマイニングの導入の前段階として、十分なイベントログを収集する必要がある。最低限必要な項目として、分析対象業務の、ID(業務単位で付与される番号)、アクティビティ(業務を構成する行動)、時刻(タイムスタンプ)を数年分揃えておく必要があるため、導入を検討する企業は、計画的にイベントログ収集しなければならない。
BPMSとは、業務プロセスの実行・管理を支援する情報システムのこと。RPAと連携させることで相乗効果が生まれると期待されている。以下に、導入事例を紹介する。
◆複数ツール間でのロボの動作状況管理
RPAは特性上、想定しない停止等が発生する。そのため、RPAツールの動作状況を常に管理することが必要。RPAツールはorchestrator機能により、ロボの管理を行えるようになっているものの、管理は、同一ツール内でのみ行わる。BPMSであれば、RPA製品に関わらず管理することが可能であり、今後のRPA導入範囲の拡張を見据えると、複数のRPAツールを管理できることが望ましい。
◆シームレスな連携
BPMSを用いることで、RPAツールやOCR機能、人手の作業等とのシームレスな連携が可能。
ロボと人の作業が混在する場合、ロボ処理完了後にオペレータに通知され、人による後続処理を実施することができる。
RPAIはツールというよりも概念だが、RPAとAIを組み合わせることにより、単純作業の自動化だけでなくさらに踏み込んで学習して生産性を上げることを指している。RPAで収集したデータをAIに取り込み、AIが予測したデータをRPAで集計・登録するところまで自動化することで、人がどのデータを収集するか指示を出さなくても自律的に処理が完了する。まだ、導入事例は限定的だが、ルールベースでしか作業ができないRPAの弱みを補完することができれば、大きくRPAの導入範囲が拡張されると考えている。
ガートナー社が発表する2019年版ハイプ・サイクルにおいて、RPAは幻滅期に入ったとの発表があったように、想定した効果が得られていない企業も多い。ガートナー社はRPAの性能が低いということを言っているのではなく、ここ数年はユーザーサイドが過度に期待していただけで、まだRPAは発展途上にあることを示唆している(ハイプ・サイクルでは、RPAが主流の採用までに2~5年程度要するとしている)。今回は、Post RPAと題して全3回でお届けしたが、当社としても、引き続きRPAの発展を注視し、Produce Next Reportを通じて皆様に情報を提供し続けたい。