~第3回 コロナ時代に企業が中長期的に取り組むべきDX~
前回は、「コロナ時代に企業が短期的に取り組むべきDX」と題して、「BCP対応」と「リモートワーク」について、解説しました。
コロナの影響でBCPを見直したり、リモートワークの対応に迫られたりしている企業も多く、前回の記事は納得しやすい内容だったかと思います。今回は、中長期的に取り組むべきDXとして、単なるデジタル化以上の変化(トランスフォーメーション)をするために何が必要なのかについて考えたいと思います。
そもそもDXとは何でしょうか。DXの話題が飛び交っていて正にDXバブル状態ですが、結局何のことかよくわからないという意見も聞きます。当社の過去のProduce Next Reportの中では、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指すと説明されています。分かるようで分からないですし、実際の生活や職場においてどのような変化が起こっているのかがイメージしづらいのではないでしょうか。
筆者はDXを、「デジタル技術によって大半のことがオンライン等で実現可能となったため、オフラインが特別な場に変化すること」だと理解しています。つまり、これまではオフィスで働くことや店に行って食事をするのが普通で、在宅勤務やUber eatsで注文することが特別、もしくは先進的と認識されていました。ところが、在宅勤務やUber eatsで注文するのが普通で、わざわざオフィスや店に行くのが特別な世界に変わったということです。わざわざ出かけることに対して意味が求められるようになったのです。もちろん、コロナの影響が大きいですが、ここ数か月でこの流れが加速しました。
DXには2つの方向性があると考えます。ひとつは、これまでのリアルの世界で行っていた行動をオンライン化/デジタル化して便利になるというもの。この流れは既にリモートワークの導入やデリバリーサービスの普及等で、多くの方が体験していることかと思います。もうひとつの方向性は、わざわざリアルの場に出向くのだから、リアルな接点では、より深くコミュニケーションができるようにしたり、感動する体験を作り上げたりしなければならないというものです。
現状、世の中で目にするDXの大半が一つ目のオンライン化/デジタル化に終始しているように思います。Withコロナ時代において外出の自粛が求められることもあり、リアルな世界での体験は話題にしづらいかもしれませんが、ワクチンが開発され、ウィルスの恐怖が去った後に以前のように外出の機会が増えると、「(デジタル技術も使いながら)リアルの場における新たな顧客体験をどれだけ磨き上げるか」が勝負を分けると考えています。リアルの場の方がオンラインよりも重要だということではなく、オンライン以上の価値を生み出せないリアルなサービスは淘汰されていくということです。
ウィルスの恐怖が去ったAfterコロナの世界においては、リアルの場における新たな顧客体験が重要と申し上げました。これは、既存業務の改善やコスト削減といった方向性とは全く異なる考え方が求められます。同じ企業に長く勤めていると、自分たちの仕事のやり方やサービスが当然のものとなり、新しい発想は出にくいものです。そういった際に、我々のような外部コンサルタントにご相談頂くと、新しい観点や気づきをご提供できるかもしれません。
従前、我々コンサルタントにはAIやRPAの導入等の、業務をデジタル化するといった案件のご依頼が多数ありました。昨今の働き方改革の流れもあり、業務を効率化することや自動化することは重要なことですし、それはWith/Afterコロナの世界でも変わらないでしょう。業務効率化等によってコストを削減すべきところは徹底的に削減し、新たな顧客体験を構築するために大胆な投資をすることができれば、DXによって好循環をもたらしていると言えそうです。
デジタル技術が発達するにつれ、大半のことがオンライン上で安価に実現できることに顧客は慣れ、サービスに対する期待値が高くなっている状況と言えます。これらの状況をよく理解して、顧客を満足させるサービスは何かを再定義し、新しい顧客体験を実現するために、必要に応じてデジタル技術が使われるという順序で考えることが重要です。デジタル化することが目的となり、顧客への価値提供を無視したDXは失敗に終わる可能性が高いのです。当社ライズ・コンサルティング・グループでも多くのDX事例を有しておりますので、気軽にご相談頂けますと幸いです。