第 34 回目は、IoT・AI の潮流とマネタイズの成功事例について、IoT による既存事業の強化事例をご紹介いたします。
「IoT で具体的な成果を出した事例ってあるのでしょうか︖」、「IoT で競争⼒を上げてほしい、と経営陣に⾔われているが、イメージが湧かない・・・」大きな可能性があると信じられていた IoT。但し、多くの企業が詳細に検討したり、PoC を⾏うにつれ、どう成果をあげていけばよいのか、悩まれている方が多いようだ。今回は、第一回でお伝えした「IoT を既存事業強化につなげる」具体論を⾒ていきたい。
まず、IoT の成功事例を考える際に、最も引⽤される事例の⼀つが、コマツ社の KOMTRAX だ。KOMTRAX とは、今
で言う IoT サービスで、建機の稼働管理・盗難予防・予防保全から、コマツ社としての「世界のどこで、どの建機が、どの
程度稼働している」という市場の全体像の把握までできるものだ。驚くべきは、このサービスが標準装備されたのが 2001
年と、今より 20 年近く前ということだ。
前回もお伝えしたが、IoT という⾔葉は新しくても、実は従来から努⼒を積み重ねてきた領域であることも多いのだ。
次に、最新の IoT の成功事例の⼀つを⾒ていきたい。アマゾン社のアマゾンダッシュボタンだ。ダッシュボタンは、ボタンを押
すと、予め決められた商品の発注ができ、⾃宅に商品が届く仕組みだ。アマゾン社によると、ダッシュボタンは、⽇本では
「特に好調」とのことだ。ダッシュボタンがなぜ IoT の成功事例なのか︖注目すべきは、アマゾンが物販の拡⼤のみならず、
メーカの広告費を取り込みうるポテンシャルを持つからだ。
ダッシュボタンの対象となる「消費財」の購買には、2 つの特徴がある。一つは、製品・性能による差別化が難しく、TV
CM 等に巨額の広告費をかけてブランディングすること。もう一つは、ブランド選択が計画的ではなく、衝動的(≒衝動買
い)に⾏われることだ。
ダッシュボタンは、この特徴を利⽤し、「ボタンを押すだけで買える」=「ブランド選択は固定される、最も強⼒な販促⼿
法」として、メーカ側の広告投資を TV からアマゾンにシフトさせることが期待できる。
上記の 2 つの事例は、共に「⾃社の強⼒な既存事業」を IoT で更に進化させている。ROI も、IoT サービス部分だけ
ではなく、既存事業全体での計算をしている。貴社でも、「既存事業の差別化のために、IoT がどう貢献できるか︖」を
検討してもいいのではないか︖
次回は、IoT における AI の活用方法を考えてみたい。