第 35 回目は、IoT・AI の潮流とマネタイズの成功事例について、IoT における AI の活用方法をご紹介いたします。
「つなげてデータをとるだけで精一杯。でも経営層は、AI で分析しろ、とうるさいのです・・・」、「IoT も AI も、魔法の杖のように期待されても困る・・・」既存事業の差別化戦略の「⼿段」として IoT を位置づけ、センサを設置し、データを吸い上げ、遠隔制御等の付加価値をつける。
データが蓄積され、そのアナリティクスで新たな価値が出せそうになってくる。そうなると、頭に浮かぶのは AI・・・今回は、第二回でお伝えした「IoT における AI の活⽤⽅法」の具体論を⾒ていきたい。
AI、例えばディープラーニングやマシンラーニング等は、(現状)⼈間が与えた目的を達成するための「手段」を、多くのデ
ータから学び「最適化」していく。つまり、ビジネスの目的、つまりビジネスモデルや付加価値を定義するのは人間なのだ。
そして、画像解析や自然言語解析等、AI は日進月歩で進化している。そのような中、少し誇張した表現かもしれない
が、「人間が、AI の技術を理解し、ビジネスモデルを設計する。その上で、最適化に AI を活用」する場合、一定の効果
を得ることは難しくなくなってきている。では、いったいどこで AI 活⽤の差がでるのか︖
最近、AI のスタートアップの経営者等と話すと、よく出てくるのは AI を使うまでのデータ下処理の重要性だ。例えば、「デ
ィープラーニングを使うまでが勝負」、「教師データを集めてクレンジングすれば、後は簡単」等。確かに、扱うデータが膨大
で、異なるデータ定義やコード体系で集めてきたデータを統合する場合、そのクレンジングだけでも膨⼤な⼿間がかかる。
さらに、故障等の異常のデータが極端に少なく、教師データが不⾜することもある。モデルを作ったが精度が低く、データを
⾒返したら、教師データの判断基準があまりにもばらついており、教師データの修正が必要なこともある。
よって、「既存のデータをクレンジングする」、「今後きれいなデータをとれるようにする」、「必要に応じて、教師データを生成
する」という活動を並列で進めて⾏くことが理想だ。例えば、GRID 社のクレンジングや教師データの生成等を活用しても
よい。また、きれいなデータをとれるようにするには、⼯場等の設備投資の「戦略・⽅針・考え⽅」から変えていく必要があ
る。例えば、BMW 社は 20 年近い年⽉をかけ、シーメンス社と共にきれいなデータをとれるようにしてきた。
では、データの下処理ができて、ディープラーニングを活⽤できればいいのか︖実は、ある種のビジネスにおいては、もう⼀つ
大きな課題が残る。それが通信のタイムラグだ。
例えば、⾃動運転⾃動⾞を想像してみてほしい。⾼速道路で前の⾞が急ブレーキを踏んだ。⾃分の⾞が、その画像デ
ータを無線でサーバに送り、サーバが画像解析のプログラムを回し、制御命令を送信し、⾃動⾞がそれを受けて回避⾏
動をとる。この場合、通信のタイムラグがあれば、衝突事故につながるリスクもある。
確かに 5G の通信の開発等も進むが、通信の進化よりも、データ通信量の上昇の⽅が早いため、このままではクラウドコ
ンピューティングがパンクしてしまう。だからこそ、端末側でコンピューティングし、通信量を減らすエッジコンピューティングと、で
きるだけリアルタイムに欠損がない通信をするファストデータが重要になる。
例えば、エッジコンピューティングであれば、イデイン社のラズベリーパイのような数千円の汎⽤基盤を使い、⾼速に画像認
識をする技術もある。ファストデータであれば、アプトポッド社のように、⾃社で通信プロトコルまで作り、極⼒⽋損のないリ
アルタイムストリーミングを実現する技術もある。
これらの技術も活用しながら、エッジとクラウドでのコンピューティングをすみわけながら、より軽く、早く、柔軟な IoT サービス
網を構築していくべきではないか︖