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~Digital 入門 第 2 回:オムニチャネル~

シニアマネージャー 村井 高

第 25 回目は、Digital 入門 第 2 回:オムニチャネルについて、ご紹介いたします。

実店舗型からオムニチャネルへ



ユナイテッドアローズは早期からネット通販の可能性に着目しており、2005 年の「ゾゾタウン」への店以降、多数のサイトに展開しています。2009 年には自社運営通販サイト「ユナイテッドアローズオンラインストア 」をオープンし、機能やサービスの充実と併せて実店舗との連携を高めるオムニチャネル戦略を進めています。

■物流在庫情報の連動サイトを拡大

ユナイテッドアローズの物流在庫情報は「ユナイテッドアローズオンラインストア」のほか、「ゾゾタウン」や「アイルミネ」など合計 8 サイトと連動。各通販サイトの商品が欠品した場合でも、物流倉庫に在庫がある場合は取り寄せ販売ができるため、販売機会ロスの縮小につながっています。

■セール時期における売上増加と販売効率の向上

セール時期に実店舗の混雑を避け、欲しかった商品をネット通販で購入するお客様が増えています。セール商品の色欠けやサイズ欠けによって実店舗では販売機会ロスが生じてしまうセール時期後半において、セール対象品をネット通販サイトに集約して販売することで、在庫効率を向上させています。

■実店舗の売上データをもとにした商品レコメンド機能の追加

この同時購買相関によるレコメンド機能は「ユナイテッドアローズオンラインストア」と実店舗での売上データをもとにしており、実店舗を持つユナイテッドアローズならではの精度の高い商品提案ができています。ユナイテッドアローズ発信のおすすめ商品、お客様一人ひとりの閲覧履歴に応じたおすすめ商品の紹介に加え、実際に多くのお客様が同時購入している商品を案内することにより、サイト滞留時間の増加やセット率向上が期待されています。

■実店舗への商品取り寄せサービス

オムニチャネル戦略の一環として、「ユナイテッドアローズオンラインストア」で選択した商品を実店舗へ取り寄せ、実際に試着できるサービスを開始しています。サイズや着心地、商品のディティールなどを実際に店頭で手にとり、確認できるようになっています。

2015 年 3 月期のネット通販ではこれらの取り組みが奏功し、単体におけるネット通販売上高は前期比 109.8%「ユナイテッドアローズオンラインストア」の売上高も前期比 119.9%と高い伸びを示し、ネット通販比率は 12.0%となっています。

また、実店舗と「ユナイテッドアローズオンラインストア」を併用される顧客が増加しており、それぞれを併用さるお客様の年間購入金額は、実店舗のみを利用されるお客様と比較して約 2.8 倍に達しています。

出所:株式会社ユナイテッドアローズ IR 情報より

このように、オムニチャネル化を推進している企業では、売上が伸びていることが実例からもいえ、かつ、在庫効率向上等の業務効率化にもつながっています。

ネット企業からオムニチャネルへ


続いて、ネット企業がオムニチャネル化を推進している事例を紹介します。Amazon はインターネット経由で本を販売する EC書店からスタートし、今では食料品から家電製品まで幅広く取り揃えた世界最大の EC 企業となっています。その Amazonがレジでの決済不要で棚から取り出した商品をそのまま持ち帰ることができるコンセプトの「Amazon Go」というコンビニ事業をYouTube ムービーで発表しています。

※Amazon Go :https://youtu.be/NrmMk1Myrxc

■AmazonGo とは…

Amazon がスタートするコンビニ事業「AmazonGo」は 2017 年の初め、シアトルに第一号店をオープンすします。これまでのリアル店舗では、買い物する際にレジは不可欠でしたが、その常識を覆すようなシステムとなっており、レジという概念が存在しないものとなっています。あらかじめ専用のアプリをダウンロードしておくと、AI(人口知能)等の技術を駆使し、店内で手に取った商品が自動的にアプリの買い物カゴに入り、そのまま店を出れば Amazon のアカウントで自動的に課金される仕組みです。

今後、コンビニに配置する商品を Amazon でのレビューや予約状況、販売状況をもとに決定することなど、ネットでの顧客購買行動や購買履歴を活かしたレコメンデーションをリアル店舗にも展開できるようになってくるであろう。EC サイトの強みを最大限に活かしつつ、Web だけでは提供できていなかった「実際に目で見て触る」「買ってすぐに手に入れられる」体験を意識した店舗となってくると考えられます。

■何故、Amazon や楽天はリアル店舗を出店するのか?

Amazon 以外にも、EC から出発してリアル店舗を開いた企業は意外と多いです。例えば日本でも EC 大手の楽天が都内に「楽天カフェ」を開店したという事例もあります。こういった取り組みの主な目的は自社商品を実際に触ってもらう場を作ること。「楽天カフェ」でも同社が販売しているタブレットやスマート フォンの体験コーナーが設けられている。また、ただ単に手にとって体験するだけでなく、さらに「AmazonGo」の取り組みでは、リアルとネットが同一顧客であることを識別し、Web 上で蓄積したデータが店舗運営で活用され、効率化を可能にすることで、顧客の購買頻度を高めたり、客単価をあげたりもできます。例えば、前述した Amazon 内で好評化の商品に限定して店舗に置くことでスペースの限られた店舗内を効率的に活用するといった事が可能になっている。スマートフォンと連動したサービスを開始すれば、Amazon での購入履歴に合わせて商品をレコメンドするといったことも可能になるだろう。 Web との相乗効果により新しい顧客体験を提供できるだけでなく、店舗運営自体も進化する可能性があります。

■新時代のオムニチャネルとは

従来は、リアル店舗を首都する小売業者が店舗を Web と連携させる事をオムニチャネルと呼んでいましたが、最近のオムニチャネルではその逆で Web 上にて成功した EC が新たな顧客体験を提供するチャネルとして、リアル店舗を開くケースが増えていくと考えられる。既存の店舗オペレーションやシステムがあり簡単に変更することが難しいという課題を持つ小売企業と違い、EC 企業は Web との連携を前提として 0 からリアル店舗を作ることができるため、オムニチャネルに最適化した形での店舗運営が可能になると考えられる。あらゆる企業があらゆるチャネルで顧客に対してシームレスに購買体験を提供する真のオムニチャネルが実現されるのではないだろうか。策が不可欠となってきています。