第 24 回目は、Digital 入門 第 1 回:オムニチャネルについて、ご紹介いたします。
デジタル化の進展とテクノロジーの進化により、顧客の購買行動は大きく変わり、ビジネスの在り方そのものが大きく変わりつつあります。そのような中、企業は、Web・コマース・モバイル・IoT・ビッグデータ・アナリティクス等のデジタルの各要素をビジネスに活用することが求められています。事業価値最大化を目指す上では、事業全体の視野から、リアルとデジタルをいかに融合させるかを考え、シームレスに業務プロセス/システムに反映することが必要です。そこで今回は、オムニチャネルに関して、紹介致します。
顧客があらゆるチャネルから購買ができるよう、販売チャネルや流通チャネルを統合すること。テレビ、ダイレクトメール、カタログ、実店舗といった従来の販路に加えて、近年ではインターネットやスマートフォン・タブレットといったデジタル技術が急成長しており、その全ての販路と流通経路がシームレスに融合することを強調した小売り戦略のことです。
オムニチャネルが広まったのは、2011 年アメリカの百貨店メイシーズの取り組みがきっかけで、日本でもセブン&アイグループなど取り組む企業が増えてきています。いくつかの販路を組み合わせて提供する取り組みはマルチチャネルあるいは O2O(Online To Offline)、クロスチャネルとも呼ばれますが、オムニチャネルはあり得る全ての販路を統合し、かつ、在庫管理や顧客管理、配送も含めたバックエンドも統合し、シームレスな顧客の体験を実現することが、マルチチャネルやクロスチャネル、O2O との違いともいえます。
以下が、シングルチャネル、マルチチャネル、クロスチャネルとオムニチャネルの違いをわかりやすくイメージした図になります。
(出所:https://www.wilsonperumal.com/…/achieving-omni-channel-nirv…/)
また、具体的には、例えば、下記のようなことを指しております。
・実店舗と EC サイトで在庫を一元管理し、どちらで売れても在庫データが連動。
・実店舗と EC サイトで同一の顧客であることを判別し、実店舗の接客担当者が、EC 上の購買履歴や好みを理解して、接客対応する。
・EC に在庫がない場合、近くの店舗に誘導することで、販売機会のロスを防ぐ。また来店機会を得ることで接客し「クロスセル・アップセル」を促す。
・EC で購入した商品を、近くの店舗ですぐに受け取り、顧客の利便性を高める。
・Facebook や Instagram 等の SNS で商品を宣伝し、実店舗や EC に顧客を誘導する。
・EC でお気に入りに登録した商品の在庫がある店舗に近づいたら、その商品情報をプッシュ型でスマホに通知する。
ワンプッシュでお気に入りの商品を簡単に注文できる Amazon Dash Button
(https://www.amazon.co.jp/b?ie=UTF8&node=4752863051)
あらゆる販売チャネルがシームレスに統合され、顧客は各チャネルを意識することなく、購買体験をすることが出来、その為には、バックエンドの業務システムが統合されている必要があるということが言えますが、デジタル化の進展に伴い、商品を購入する際の利便性が高くなっていると感じている方も多いのではないでしょうか?
みなさんが商品を購入する際に、特に販路を意識せずに商品購入の意思決定をされるケースが多くなってきていますが、それもオムニチャネルのひとつか思います。そこで、オムニチャネルに関わる重要な顧客インサイトについて、いくつか紹介させて頂きます。
1.顧客は実物をみて触って確認します。
例えば、服を購入する場合、実際に手にとって、試着して、店員による対面接客を請けたいというように考える方は多いのではないでしょうか?店舗を運営する企業の中でも、自社の EC サイトを立ち上げ、また、楽天や Amazon に出店する企業が増えてきております。社内が縦割り型の組織であり、業績評価制度の関係から、店舗と EC で客の奪い合いになっているケースもあろうかと思います。
しかしデジタル化の進展により、必ずしも EC に顧客が奪われるわけではなく、依然として多くの顧客は実店舗で、実際に商品を見て購入したいと思っている方も中にはいます。顧客の購買体験価値を高めるためには、店舗のみ、EC のみの施策ではなく、相互にメリットを補完しあいながら、一貫したブランドイメージを訴求しながら、運営していく必要があります。よって、必ずしもデジタル化の進展により、顧客が実店舗で商品を購買しなくなるわけではありません。
2.顧客は常に商品と接しています。
代の顧客は、若年層を中心に、テレビを見る時間よりもスマホを見る時間のほうが長くなってきていると言われています。そのことはみなさんも体感しているのではないでしょうか?電車に乗っている時や家にいる時にも、スマホで Facebook やInstagram 等のソーシャルメディアを見ている時、ネットサーフィンをしている時、バナー広告や、SNS のタイムラインでの友人の商品に関わる口コミなど、あらゆるタッチポイントで商品情報に触れています。また、店舗で商品を手にとっている時にも、スマホで、他店舗、他ブランドの商品と比較検討します。スマホを使えば、いつでもどこでも、どんな商品でも購入できてしまいます。
3.オムニチャネル型の顧客のほうがお金を使います。
実店舗型の企業がインターネット販売も併用したことで、EC での売上が延びただけではなく、店舗も相乗効果で売上げが伸び、実店舗だけ利用する顧客に比べ、併用する顧客のほうが平均単価 2.2 倍という事例も出ています。オムニチャネル型顧客は、実店舗でもオンライン店舗でも購買を行う上、店舗で購買に迷ったものの、家に帰ってから購買を決め、スマホから購入するケースもあります。あらゆるチャネルをシームレスにつなげ、循環させることが、購買意欲を促進させることにつながります。
テクノロジーの進化に伴い、商品情報に接するタッチポイントが多様化し、デジタル⇔リアルを行き来する中で、顧客は商品購入の意思決定をしており、且つ、複数のチャネルで購買をしている顧客にとっては、単独チャネルしか利用していない顧客よりも、購買単価が高いということが言えます。よって、売上向上には、オムニチャネル施策が不可欠となってきています。