前回は、AI導入の環境についてご紹介した。
今回は、実際にAIを導入する際にどういった点に気をつけてアプローチすべきかを考える。
前にも述べたように、AIとその周辺技術の進化や製品・サービス化の動きは非常に早く、昨年と今年でも状況は非常に変化している。また、AI導入事例に関する情報も日々増え続けている。一方で、導入が頓挫したり、期待した成果を得ることが出来ずに終わってしまったという情報も多く見られる。これらの失敗は、AIへの過度な期待や誤解により生じていることが多い。また、そもそもAIを使う必要が無いところに高額なコストをつぎ込んだ結果、それに見合う効果が得られなかったといたことも起きている。
まずは、現在のAI技術で何をどこまで出来るのか、また近い将来にはどこまで出来ることになるのかといった状況を正しく理解した上で、活用方針を定める必要がある。
既に非常に多くのAIに関連する製品やサービスが提供されている。例えば学習済みのAIモデルを実装した製品として代表的なAI-OCR(AI機能を用いて認識精度を高めたOCR)をとってみても10社以上から製品やサービスが提供されている。しかし、同じAI-OCR製品・サービスであってもコンセプトや機能や性能はまちまちであり、提供方法もクラウド、オンプレ、APIなどがある。
また、企業独自の課題に対しAIを構築する場合には、数多くある学習用アルゴリズムから課題に対して有効かつ最適なものを選び出す必要があり、更にはどの製品やプラットフォームがそのアルゴリズムを提供しているのかといったことも知る必要がある。
<アルゴリズムの種類と代表例、および主な用途>
[回帰](例)線形回帰:傾向に基づく予測などに利用
[分類](例)決定木 :画像分類や文字認識など、情報の分類に利用
[クラスタリング](例)k平均法 :レコメンドなど、類似データのグルーピングに利用
[他]ニューラルネットワーク:より複雑な分類や回帰に利用
文字認識や音声認識などの業界を問わず汎用性の高い分野で利用されるAI製品は学習済みモデルを実装して提供されることが殆どであり、自社で改めて学習データを用意する必要性は低いが、より専門的な分野で利用するAI製品を利用する場合や自社でAIを構築する場合には学習用のデータが必要となる。学習用データを持っていない場合には、当然ながら必要量のデータを蓄積する期間を考慮する必要がある。また、既に蓄積されているデータがあっても、学習に適した質の良いデータにクレンジングしたり、場合によっては再度の蓄積が必要となる。
AI導入では当初期待した程の効果が得られないケースの要因には、上で述べたAIの現状と期待値とのギャップ以外にも、学習モデルに適用したアルゴリズムが課題に適していなかった場合や必要レベルの品質の学習データが取得できずAIの精度が上げることが出来ない場合などもある。こうした事態を想定し、AI導入の場合には、いきなり本番での実装を行う前に、小規模の環境を用意し効果を検証することが望ましい。
よく言われることだが、AIは万能ではない。精度の高い答えを出すことは出来てもそれが全くの正解だとは限らない。ビジネスにおいてAIを利用する場合には、その点を念頭に置き、導入する必要がある。具体的には、AIの出した答えに対し必ず人が確認・検証するプロセスや、AIの出した答えをそのまま用いたとしても後の工程で補正されるなど、リスクがないと判断できるようなプロセスに設計しておく必要がある。
当社では、AI活用機会の特定から導入計画の策定および導入におけるPMO支援を行っている。
AIの活用をご検討の際は、ぜひ当社までお声掛けください。