第16回目は、AI(人工知能)時代の人材育成について、ご紹介いたします。
AI 時代の人材育成を考える上で重要な論点は、次の 2 つになります。
1. どの業務を人間が行い続けるのか?
2. その業務をどのように育成するか?
「AI が人間を教える」領域としては、「正解があり、体系化された知識の学習」が考えられる。この領域では、「アダプティブ Eラーニング」が最も効果が高くなりうる。つまり、特定の受講者が間違えた問題を分析し、その原因となる体系的知識の穴を見つけ、そこを補強していく仕組みだ。例えば、東京大学の山崎準教授は、プレゼンテーションへの印象を精度高く予測する手法を研究している。それを応用すれば、将来的にはプレゼンテーションやロールプレイの相手であり先生は、人間から AI に変わっているかもしれない。しかも、場所・時間を選ばず、同時開講数もほぼ無限で、コストは極めて安価だ。一方、「人間が人間を教える」領域は、「人との議論によって学ぶ領域」と「人間にしかできない領域」の 2 つにわかれる。
次に考えるべき論点は、「どのように育成するか」だ。特に、「AIが人間を教える」か「人間が人間を教える」かの判断が重要になるだろう。
「AIが人間を教える」領域としては、「正解があり、体系化された知識の学習」が考えられる。この領域では、「アダプティブEラーニング」が最も効果が高くなりうる。つまり、特定の受講者が間違えた問題を分析し、その原因となる体系的知識の穴を見つけ、そこを補強していく仕組みだ。例えば、東京大学の山崎準教授は、プレゼンテーションへの印象を精度高く予測する手法を研究している。それを応用すれば、将来的にはプレゼンテーションやロールプレイの相手であり先生は、人間からAIに変わっているかもしれない。しかも、場所・時間を選ばず、同時開講数もほぼ無限で、コストは極めて安価だ。
一方、「人間が人間を教える」領域は、「人との議論によって学ぶ領域」と「人間にしかできない領域」の2つにわかれる。
「人との議論によって学ぶ領域」は、唯一の正解がない問題の解き方を学ぶ際に有効だ。グループで討議し、さまざまな選択肢や考え方を短時間で学ぶことができる。多面的に考える、極めて効率的な場だ。但し、この部分にもテクノロジーは活用できる。ソーシャルラーニング(ネット等を通し、受講者同士で学びあう)の効果は、2015年のATD(注:世界最大の人材育成カンファレンス)でも多くの発表があった。
そして、AI時代の人材育成で一番重要なことは「人間にしかできない領域」での、育成の設計と実施だ。人間に残る領域としては、例えば次のようなものがある。
●主観的判断(判断材料に、客観/科学的データのみならず、哲学・理念や、未検証の仮説を織り込むもの)
●高度な接客・営業(人間が生理的・直感的に AI に相談したくない領域が残る。例えば、裁判官に関しては人間を希望する人が多い)
●高度なリーダーシップ/メンテナンス力等
高度な AI でも理解できない/成功パターンを作りにくい領域なので、非常に高度な挑戦になるだろう。そして、AI がクラウドサービスとして安価に利用できる時代になると、競合との差別化要因は、AI の活用方法、人間にしかできない領域の能力、
(主に希少)資源に集約されていくと思われるので、この領域の人材育成は極めて重要になる。
だからこそ今から人材育成を担うものは、戦略や経営の知識・経験を積んでおくことが求められるだろう。
最も難しく、かつ新しい挑戦は、歴史上最大のチェンジマネジメントをリードすることではないか?
順番に考えてみよう。まずは、AIやロボットにより、多くの仕事が代替されると、組織が小さくなり、生産性が上がり、働き方が変わる。言葉を変えると、すごく少数の社員で、巨額の利益を稼ぐことができるようになる。よって、組織・制度設計は、より小規模かつ個人に着目する方向に変わっていくだろう。「平等」ではなく、「その個人に見合った」が重要になってくる。採用も、競争力を高めるためのものと、社会保障的なものにわかれるのではないか?そして、競争力を高めるための人材は、グローバル人材マーケットでのオークション的な形になり、現在の通常の採用とはまったく異なるものになるだろう。一方、社会保障的な採用とは、巨額の利益の一部雇用を通して生きがいや生活費を提供するものだ。もちろん、社会保障制度や価値観がAI時代に追い付いてくると、「働く」という概念が変わり、こういった社会保障的な採用は不要になってくるかもしれない。
ここでの人間ならではの問題は、「自分が一生懸命頑張って働いて、能力を磨いてきたのに、AIやロボットに仕事を奪われた」と感じる人が激増することだ。その方たちのケアが、AI時代の人事にとっては、最大の挑戦であり、中核的な使命になるのではないか?おそらく、仕事を奪われる規模・スピードから考えると、歴史上最大のチェンジマネジメントになりうるのではないか?その具体策としては、メンタルヘルスと収入源の確保支援的な事後対応的な施策と、「AI時代の人間の生き方の啓蒙」という予防策的な施策にわかれるだろう。
私達は、AI によって「人間性の復興」が実現すると考えている。つまり、古代ギリシャの奴隷の役割を AI やロボットが担い、人間は古代ギリシャの貴族の役割のように文化や学問等の探求に集中できるようになると思う。よって、AI やロボットがもたらす未来は、明るく幸せなものと信じて、未来を作る担い手の一人になれるよう、全力を尽くしていきたい。