近年、世界的なAIブームが巻き起こっているが、これは歴史的に見れば第3次ブームにあたる。第2次ブーム以前は、AIが研究の域を脱することは出来なかったが、第3次ブームではAIがビジネスで実用化され始める域に達した。AIが我々の未来に大きな影響を及ぼすのは、もはや絵空事ではない。企業にも人にも、正しくAIを理解し活用できる能力が求められる時代が到来した。これらの背景を踏まえ、今後3回にわたり、AIの実態やビジネスへの応用等について連載を進めていく。
第 1 回は、AI の実態を理解していただくために、AI が出来る事について紹介していく。
まず初めに伝えておきたいのが、現代の AI は万能ではないということである。
例えば、2016年に英ディープマインド社の囲碁AIが、当時のトップ棋士に勝利したというニュースが世界中を飛び交ったが、このAIは囲碁という1点のみにおいて人間を上回ったに過ぎず、人間のように会話をしたり計算をしたりと、多様に振る舞える訳ではない。このように、現存する全てのAIは、特定領域でのみ機能する特化型であり、汎用的な振る舞いを行うことは出来ない。また、多くのAIは人間同様にミスをするということも理解しておいてほしい。現代のAIは、特定領域において人間よりも高い能力を発揮するものという位置づけであり、その「特定の領域」は、認識・行動・言語の3つに分類できる。
例えば画像認識は、読み込んだ画像が何であるかを自動分類する技術であり、小売業における店舗来店者分類への利用等、既に多数の事例が存在する。画像の他にも、音声、テキスト、センサー値など様々なデータを分類するAIが登場しており、マーケティングにおける行動予測や機械故障の検知、防犯・監視等、利用シーンが多方面に広がってきている。
<行動>
①ロボティクス
外部の環境変化に対して、AI が自律的に対応する技術で、自動運転や物流・農業の自動化等への応用が期待
される。
②インタラクション
外部の環境変化に対して、AI が自動で試行錯誤する技術で、家事や介護等への応用が期待されるが、そのほ
とんどが、研究段階にある。
<言語>
①シンボルグラウンディング
人間が行っている言葉とイメージを紐付ける作業のことで、AI によるリアルタイム翻訳や EC サイトの自動
翻訳等への応用が期待される。
②知識獲得
大規模な知識理解を目指す考え方のことを指し、AIによる秘書やホワイトカラー業務のサポートが期待されるものである。
言語については、いずれも現時点では研究段階にある。
AIは、発展途上でまだまだ課題も多いが、潜在力は大きい。AIをビジネスへ応用するためには、AIについて正しく理解を深めていくことが重要となる。
次回は、ビジネスへのAI導入アプローチについて、解説をしていく。