第1回目は、自動運転の世界ついて、ご紹介いたします。
最近巷で話題になりつつある「自動運転」。皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか?きわめてシンプルに言えば、人が運転しなくても、目的地まで到着する。こんな素敵な技術が近い将来実現することは非常に面白いですね。皆さんはこの「自動運転」が世に普及すると、何が起こるかイメージできますでしょうか?
本日は「自動運転」が普及した世界での変化について、①ドライバー②自動車会社③新規産業④自動車市場全体の観点から我々の考えを語らせて頂きたいと思います。
①ドライバー:運転時間が自由時間に!
「自動運転」が実現されることで、ドライバーはこれまでの運転していた時間で様々なことができるようになります。車通勤されている方は、新聞を読んだり、会社の予定を確認したり、ミーティング資料を確認したりできます。ゴルフに行かれる方は、クラブを磨いたり、仲間内でコースの攻略法を話しながら盛り上がったり。旅行時に移動される方は、次の目的地の詳細情報を確認したり、きれいな景色を眺めたりなど。さらに、急ぎたい時、ゆっくり移動したい時、ベストなタイミングで目的地に移動してくれることも可能となります。様々な移動手段の中でも、最も便利な移動手段になると言えるでしょう。
②自動車会社:車の「操舵性」以外での競争が激化
これまで、乗り心地、ハンドリング、アクセルのレスポンスなどが重視されてきましたが、「自動運転」ではそもそも他の観点が重要視されてきます。車の中でドライバーに快適な時間を与えるための取り組みが必要となります。例えば、シートの座り心地はそもそも運転することを前提としていないため、よりリラックスできる態勢が変わってきますし、内装のラグジュアリー感が求められることも考えられます。また、大画面のテレビや、移動中でも強固なネット通信、熟睡できる空間の提供なども必要となってきます。
そのような変化から、自動車会社はこれまでと異なる競争環境が構築され、サービス開発や、異業種との協業が進むことが予測されます。自力だけで頑張る企業もあれば、提携を前提としたビジネスモデルに振り切る企業も出てくることでしょう。
自動車の中を、TV局や雑誌社などと同様に、広告媒体の一つとして、場所代を徴収する自動車会社も出てくる可能性があります。それぞれの自動車会社の戦略は、非常に楽しみな点でもあります。
③新規産業:Googleが自動車業界の競合に!
これまで異業種参入が難しいと言われてきた自動車業界において、今後最も手強いプレイヤの一つがGoogleです。
彼らは、自動運転技術を本格的に開発しようとしており、また、自動車の中でいつでもGoogleに触れることができるよう、車載器領域にも参入してきています。彼らが自動車業界で何をしようとしているか?それは、彼らのサービスを自動車の中で自由に触れられる空間を創り出し、彼らお得意の広告収益を獲得する媒体にしようとしています。人が移動することは、必ず目的があります。誰かと会ったり、何かを買いに行ったり、旅行したり。その目的に応じた最適なサポートを行うと共に、彼らが保有する多数の広告主の中から最適な広告を提示し、そこで収益を上げることが狙いです。何故彼らにそんなことができるのか?それは、Google Account経由で獲得するネット上の嗜好性と、目的地を鑑みた次の行動の予測ができるからです。例えば、旅行で温泉に出かけようとしている方がいたとして、その方が普段からラーメン屋をよく検索していたとします。その方に対して、旅行先近くの地元でおいしいラーメン屋の広告を、お昼時に提示したら、ついつい行きたくなりませんか?Googleはそのような形で、ドライバーを操りながらも、満足度の高いサービスを提供することができるのです。
そしてGoogleが提供するサービスの品質が高すぎると、ドライバーの関心は、どの車に乗るのか?ではなく、Googleのサービスが受けられる車かどうか?に替わってしまいます。そうなると、自動車会社が提供できる価値は非常に限定されることとなります。非常に大きな脅威となるのです。
④自動車市場全体:乗用車の台数が大幅に減少する?
「自動運転」ができると、これまでの乗用車が、ほぼタクシー化してしまいます。運転を一つの楽しみと考えている人以外は、移動できればよいという考えが、より強くなってしまいます。そうなると、乗用車を持つまでもないと考える顧客が増えてしまうリスクがあります。また、「自動運転」タクシーが街中を走行し、スマホなどで簡単に呼べるとなると、それこそ、乗用車を持つまでもなくなってしまいます。タクシーの乗車率は増え、世の中のタクシーの台数は増える。一方で、乗用車は大幅に減る可能性があります。「運転免許」が世の中からなくなることも考えられます。
その時、日本の中核を担う自動車産業はどのように変化を遂げるのか?
我々も、コンサルタントとしての視点で、今後も継続的に成長していける自動車産業を実現する支援ができればと考えております。答えは複数あると思いますが、変化は必要です。そこで価値を見出せるサービスを我々も必死で見つけ出すことが必要です。これは、我々に課せられた一つの使命として、今後も本業界の新たな流れに対し、より成長していける道筋を出すため、一緒に立ち向かっていきたいと思っております。