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~シェアリングエコノミーが変える未来~

シニアマネージャー 北村 俊樹

第 29 回目は、シェアリングエコノミーが変える未来について、ご紹介いたします。

インターネットの発展



昨今、インターネットの発展や SNS 等の普及もあり、人々の消費スタイルが単独所有から共同利用へと変化してきました。その中で、欧米を中心に、使われていない資産をインターネットを介して有効活用する「シェアリングエコノミー」というサービスが台頭してきました。有名なサービスとして、Uber や Airbnb をご存じではないでしょうか?

国内市場


国内市場においても 2020 年までにシェアリングエコノミーの市場規模は、600 億円まで拡大すると言われており、引き続き成長性のある分野として注目されています。一方で、シェアリングエコノミーの普及に伴い、これまでの産業や就業構造が大きく変わる可能性があり、官民共にこれらの構造変化に対する予測、課題の洗い出し、対策の立案、ビジネス機会の導出といった各種検討会が多く開催されるようになりました。

ライズ・コンサルティング・グループでは、こういった検討会や提案に多く接する機会があり、今後のシェアリングエコノミーの普及に伴う産業・就業構造の変化と課題に対し、以下の通り考えています。

1.マッチングコストの極小化

シェアリングエコノミーの仕組みは、インターネットや SNS 等を活用し、リアルタイムに不特定多数の参加者による需要と供給を容易にマッチングさせることが可能となるため、N:N(不特定多数)による CtoC(個人間取引)の特性上、所定の価格によるサービスの実行保証、及び品質保証が困難になるのではという課題認識を持っています。

2.モノのサービス化

コストの極小化によってマッチング可能な単位も細分化され、消費者の意識が「所有」から「利用」へと変化することに伴い、旧来型のビジネスモデルとの競争が激化し、既存事業者が破産する事例が発生してきました。今後、既存事業者に雇用されていた労働者が職を失う可能性が考えられます。

3.働き方の多様化

個人の生活に合わせた場所・時間・仕事で働くスタイルが増加し、企業の雇用に依存しないフリーランサーが増加していくことで、雇用が短期請負形態に切り替わり、仕事・報酬の安定が失われてくると思われます。そうすると、これまで被雇用者を守っていた労働基準法や各種社会保障が適用されなくなる可能性が考えられます。

課題認識


しかしながら、こうした課題認識がある中で、米国ではシェアリングエコノミーの拡大に伴い、タクシーやホテル業の雇用と売上が拡大したという事実もあります。国内のアンケート調査においても、潜在的に空いた時間で働きたいと考えている層(働いていない 65 歳以上、完全専業主婦、学生、就業者など)が 500 万人以上存在するといった結果も発表されており、新たな就業機会の提供につながるのではないかという大きな期待が寄せられています。一方で、シェアリングエコノミーの普及により、新しくフリーランスとして働く人も増えると考えられていますが、人工知能(AI)等のテクノロジーの進化によっては、一部の定型ワークを中心に一定規模の雇用が奪われる可能性も示唆されています。

このように当社では、官民との連携の中で、上記のような課題や仮説に対する検証や今後の人材育成に向けた各種検討会の開催や提案等を継続して実施しており、引き続きこうした社会構造を大きく変える最先端技術とサービスに関し、積極的に関与しながら、次なる未来の創造に向けて邁進していきます。