第 38 回目は、顧客志向のサービス開発から UX デザインについてご紹介いたします。
電⼒インフラのデジタル化によって、需要家に対する 2 つのサービス形態
が登場した。⼀つ目、需要家の消費パターンに即した電気料⾦契約で
あり、様々なタイプの電⼒契約が登場している。⼆つ目は、電⼒消費
量から需要家の⾏動ログとニーズと読み取り、他のサービスをカップリング
して提供してするサービス(宅内 IoT)である。
電気料⾦について、電⼒⾃由化後、多くの電⼒⼩売り事業者が競争
することで、様々な料⾦サービスが登場している。経済産業省によると
結果として、低圧向けのスイッチング(新電⼒への切り替え)の⽐率
は、平成 29 年 5 月の時点で 10%を超えたとされている。
主な料⾦メニューとして、他のインフラ(通信、ガス、⽔道等)のセット割引、⻑期契約による割引、従量課⾦制度等、
やや高額な再エネ 100%の電⼒等、差別化された商品開発がなされている。このような競争環境下で、需要家の利便
性は⾼まりスイッチング⽐率はより⾼まると想像する。しかし、小売事業者にとって需要家獲得と原価低減を同時に求め
られ、調達では市場価格に依存しない⾃主電源を開発、あるいは顧客開拓能⼒を強化等、過当競争に巻き込まれな
いための手段が必要となる。
そこで登場するのが、電⼒サービスの付加価値を⾼める宅内 IoT 事業である。電⼒を中⼼とした各種センターを宅内に
設置して、データ収集・加⼯・分析を⾏い、データを収集してプラットフォームを構築、電⼒⼩売を含むサービス事業者に
プラットフォームを提供することで、需要家の利便性向上に寄与する。
既に以下のような様々なサービスが提案されており、その多くが実証実験段階にある。
1. 省エネ︓電⼒消費量から家電製品の省エネ診断により買換えを促進するサービス
2. 保安︓電⼒消費量の情報を元に家庭内の電⼒機器の保守点検
3. ホームセキュリティ︓みまもり、防犯の情報の提供
4. 小売・EC︓電⼒消費に合わせて地域の⼩売店の販売促進情報を提供
5. ヘルスケア︓家庭内の健康状態に合わせた室温管理と省エネの同時達成
6. ⾃治体︓電⼒契約の網羅性に着目し⾃治体の広報チャネルを構築 etc
何れも市場規模の上では有望とされるが、需要家がこぞって購⼊する「キーコンテンツ」になるには⾄っていない。その理
由は、既に代替サービスが存在し購⼊の必然性がない点につきる。本来電⼒はサービスを獲得する⼿段であり、需要家
はサービス獲得の対価として電⼒消費量に対価を⽀払う。よって、需要家の UX/UI をもとにして、需要家が求めるサー
ビスを基軸に考え、電⼒を付随させるものとして設計する必要があるのではなないだろうか。現在は電⼒契約単位や計
測機器が制約となっているが、電⼒はいち早く顧客のフロントに⽴ってサービス開発を進めた企業にバンドルされるかもし
れない。