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~カスタマージャーニーを実現するための課題例について~

シニアマネージャー 村井 高

第 32 回目は、カスタマージャーニーマップで描いた理想像を実現するための顧客サポートにおいて、業務・IT・人材にて発生し
得る課題について、ご紹介させて頂きます。

業務プロセスにおける想定課題




チャネルごとの業務が一貫しておらず、また顧客にとって最適なチャネルで応対がなされないという課題がありえます。例えば、メール での問合せに対し顧客が電話回答を希望する場合や、回答内容が複雑なため、電話回答のほうが解決しやすい場合があります。また、一般的、顧客は問合せの前にスマホ等で事前情報収集を⾏いますが、その中には公式/非公式なものも含まれるため、顧客の持つ情報を正確に把握するには、電話でのコミュニケーションが最適です。ただ、顧客接点のデジタル化に伴い、チャネルは増加し、顧客の期待するサービスレベルで提供を⾏うには、どのような場合に別のチャネルに誘導するか、等の基準を設けるとともに、統⼀したルールの元で、どのチャネルから来た顧客においても同⼀顧客であると⾒なし、また、⼀貫した思想でコミュニケーションを⾏うには、⾼度な業務設計スキルが要求されるようになってきています。

IT システムにおける想定課題



環境の変化スピードに IT システムの対応が追い付かず、顧客単位でコンタクト履歴の蓄積がされずにスムーズな顧客応
対ができない、という問題が生じています。企業が顧客接点として使用するデジタルチャネルは、自社資産から、オープン
プラットフォームに移⾏しています。このようなオープンプラットフォームを使う場合、ユーザー特性に合わせて複数のコミュニ
ケーションチャネルを使うことが一般的でありますが、その数は増える一方です。中には顧客個人を特定しづらいチャネルも
ある中、統合的に自社システム内の顧客データと連携させて、統合された顧客管理の中で顧客対応を可能とするシステ
ム構築が求められます。また、データ連携においても基幹業務に必要なデータの転送・蓄積・処理を中⼼としたレイヤー
と、顧客との繋がりを意識した連携を重視し、IoT、ビッグデータ、AI 等の技術を活用するためのデータとの連携が重要に
なります。その連携のためには、既存システムの API 化がデジタルトランスフォーメーションには不可⽋となってきています。

人材における想定課題



ガートナーはデジタルビジネスを確⽴するため、2 つのモードを段階的に実現していく「バイモーダル」を提唱してきています。
モード 1 は従来の業務システムなどを指し、モード 2 はビジネスを革新することです。想像を絶するテクノロジー・イノベー
ションが起こっており、そのインパクトを思考してとるべきアクションを考察しないといけない、テクノロジーを駆使する人材を
擁⽴し投資する必要があると述べています。そもそもデジタルビジネスを確⽴するために必要なスキルを持った⼈材が不⾜
しています。



また、顧客からの応対についても、チャネルごとに求められるスキル要件が異なります。例えば、電話応対業務は複雑な
内容多いため、⾼度な顧客応対能⼒と豊富な商品知識とが求められます。⼀⽅、E メールやチャットなどデジタルチャネ
ルでの顧客応対では、手際よく短時間で応対するスキルが求められます。そのため、同じ人材が電話もデジタルチャネル
も同時応対するのは、スキルが異なるため、業務効率化/コスト削減視点においては最適とはいえないものの、チャネル横
断で均一した対顧客応対を提供し、顧客体験を最適化する手段としては有効ではないかと考えます。また将来的に人
⼿不⾜を解消するために、機械的な応対については、AI にて代替することも選択肢のひとつです。

このように、デジタル化を推進するためには、マーケティング視点での最適な顧客体験価値設計だけでなく、業務 IT およ
び、それを推進する人材・組織についても、改変していく必要があります。