~第1回MaaSの概念と課題~
MaaSとは
MaaSは(Mobility as a Service)の略語で、直訳すると「サービスとしての移動」という意味となります。
MaaSについては様々な解釈や定義がありますが、スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者は、サービスへの統合の程度に応じてMaaSを5段階にレベル分けしています。
- レベル0:「統合なし」の状態で、各移動主体が独立した状態の旧来型サービス
- レベル1:「情報の統合」で、利用者には料金や時間、距離など各移動主体に関する情報を提供した状態
- レベル2:「予約、決済が統合」され、チケットレス・キャッシュレスによるシームレスな移動を実現している状態
- レベル3:「提供するサービスが統合」され、定額制パッケージにより移動の価値観、コスト意識の変革が起こっている状態
- レベル4:「政策の統合」で、MaaSを活用した都市計画やインフラ整備などの交通政策が推進されている状態
日本は現状レベル0~1の段階で、中国やドイツ等がレベル2、フィンランド等がレベル3に到達していると言われています。
MaaSのサービス例
では、上記5つのレベル別に、具体的にどのようなサービスがあるか具体的に見ていきましょう。
- レベル0:旧来のバス、タクシー等
- レベル1:トヨタ自動車やソフトバンクが参加しているMONETコンソーシアムでは、双方が保有する「プラットフォーム」を通じてデータを連携し、自動運転車両を活用した移動型コンビニやクリニック、オフィスなどの新たなモビリティサービスの提供を目指しています。
- レベル2:ドイツのダイムラーが提供する「moovel」は、各社と提携し、鉄道、カーシェア、自転車シェアなどドイツ内の主要な移動手段を組み合わせたルートの案内、予約、チケット購入、決済のプラットフォームを提供しています。
- レベル3:フィンランドで実際に利用されているMaaSサービス「Whim」は、首都ヘルシンキに本社を置くスタートアップ企業のMaaS Global社が提供するアプリで、公共交通機関、タクシー、ライドシェア、シェアサイクルなどの移動手段に対して、どのルートで移動するかという「検索」、そのルート上で利用する座席や乗り物を確保するための「予約」、運賃や利用料をキャッシュレスで支払う「決済」のすべてをアプリ上で完結させることが出来ます。公共交通の利用回数増加といった効果をもたらし、交通渋滞の解消や自動車依存から脱却という成果を付加価値付きで達成した事例と言えるでしょう。
- レベル4:現状、成功例と呼ばれるものはありません。現在、政府は国民の都市生活に必要なインフラやサービスを効率的かつ合理的に運用できる共通プラットフォームにデータを連携させ、それらを軸に様々なサービスを提供する「スーパーシティ」構想などを模索しています。
Maasが解決すべき社会問題
このようにMaaSは社会課題を解決する切り口となりうるサービスといえます。日本ではどのような解決すべき社会課題があるでしょうか。例えば、東京では、公共交通網が充実している一方で、日常的な渋滞・混雑が顕在化しています。他方、地方都市部においては、自家用車に依存した交通インフラとなっている地域が多く、高齢化社会に対応した交通手段の確保や、利用者数の低下による公共交通の採算性・利便性の低下等が課題となるでしょう。また、過疎地域では、そもそも交通手段がないということが課題でしょう。
このように、地域や利用シーンによって抱えている課題は異なり、利用者のどのような課題に対して、どのようなサービスを提供するか、地域特性や利用シーンごとに分解して考えることで、MaaSを軸としたビジネスの形が見えてくるでしょう。
終わりに
ここまで、MaaSのサービスの概要や、日本におけるMaaSの課題について論じさせていただきました。次回は、過去に当社が関わらせていただいたMaaSに近いプロジェクトのご紹介や、また当社が考えるMaaS成功のポイントなどについて説明させていただきます。